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  • 京都の夜――失われた夢の竹林での出会い

    Reading Time: 2 minutes  SELEZIONA LA LINGUA ・ 言語を選択 🇮🇹   ITALIANO 🇯🇵   日本語 アヤが居酒屋の最後の灯りを消したとき、カウンターの奥に掛けられた時計は午前一時を数分回っていた。夕方六時から、客の出入りや話し声、食器の音、注文の声で賑わっていた店内も、ようやく、そこで長い時間を過ごす者だけが本当に知っている静けさを取り戻していた。最後の客たちが暖簾をくぐり、ほとんど人影の消えた夜の通りへ散っていってから、まだそれほど時間は経っていない。アヤはカウンターを整え、厨房を確かめ、すべてがあるべき場所に収まっていることを確認すると、幾度となく繰り返してきた儀式を終える者の穏やかな安堵とともに、鍵を回した。 居酒屋は「月の宿」のすぐ隣にあった。二つの建物をよく知らない者なら、同じ店の一部だと思ったかもしれない。壁は触れ合いそうなほど近く、小さな内扉を使えば、外へ出ることなく一方からもう一方へ移ることができたからだ。どちらもアキコという老婦人の持ち物だった。彼女はアヤの父の古くからの友人であり、アヤとも長年にわたる深い信頼で結ばれていた。アヤの人柄をよく知り、その真面目さを信頼していたアキコが、居酒屋の切り盛りを彼女に任せ、自分は旅館のほうを預かっていたのである。 二つの店はそれぞれ別の入口を持ち、訪れる客も異なり、日々の営みの時間もめったに重なることはなかった。ただ、家の常連には知られていても、見知らぬ者の目にはほとんど気づかれないその小さな扉だけが、両者をひそやかにつないでいた。アヤは昔から、その扉に便利さと同時に、どこか安心するものを感じていた。 外へ出る前に、アヤはその扉が閉まっていることをもう一度確かめた。それから薄暗くなった店内を横切り、正面の入口へ向かった。 そこには、いつもの夜と同じようにヨルが待っていた。 入口の柱のそばに座り、尻尾を前脚のまわりに巻きつけている。黒い毛並みは闇に溶け込んでしまいそうで、光を受けると翡翠を思わせる深い緑色の瞳だけが、小さな生き物の存在を告げていた。 「今夜も待ってたのね」 背後で扉を閉めながら、アヤは言った。 ヨルはゆっくりと目を細めた。それが本当に返事なのか、それとも猫の仕草の一つ一つに意味を見いだす自分の癖がそう思わせているだけなのか――そんなことを考えるのを、アヤはとうの昔にやめていた。微笑みを向けると、そのまま通りを歩き始めた。 夜気は涼しく、心地よかった。厨房の熱と客たちの気配の中で何時間も過ごしたあとだけに、なおさらだった。店を後にしながら、アヤは深く息を吸い込んだ。 まだ眠くはなかった。 閉店後にはよくあることだが、家へ帰る前にしばらく歩きたかった。夜更けの散歩をしていると、その晩に耳にした話し声や注文の言葉、仕事だからこそ浮かべた笑顔、そして働いているあいだは心の隅へ追いやっておかなければならなかった小さな心配事が、少しずつ身体から抜けていくように思えた。 ヨルはその習慣を知っていた。呼ばれるまでもなく後をついてきて、あるときはアヤの隣を、またあるときは数歩先を歩いた。その姿には、人間と同じくらい自分もこの場所の主なのだと信じている猫特有の、静かな自信があった。 やがて明るい通りが背後へ遠ざかるにつれ、京都は少しずつ別の顔を見せ始めた。 昼間の喧騒は人波とともに退き、代わりに木々の葉擦れの音、少し離れた水路を流れる水音、そしてどこから聞こえてくるのかも分からないほど遠い足音が浮かび上がってくる。 アヤには決まった行き先などなかった。そのときの気分に任せて道を選びながら歩いているうちに、家々は次第にまばらになり、周囲の緑が濃くなっていった。 そこで彼女は、小さな竹林へたどり着いた。 一部の人々が「失われた夢」と呼んでいる場所だった。 なぜそんな名がついたのか、誰が最初にそう呼んだのか、アヤは知らなかった。観光客を惹きつける嵐山の竹林のような名声とは無縁で、規模もはるかに小さい。 だが、だからこそそこには、人に知られすぎた場所にはないひっそりとした美しさがあった。アヤは、誰もが写真に収める有名な景色よりも、そんな慎ましい美しさのほうを好んでいた。 竹林の中には、二人が並んで歩くのがやっとというほどの細い小径が延びていた。その両側には竹が密生し、昼間には陽射しを細かく濾し、夜になると道を光と影が交互に連なる場所へと変えていた。 アヤは何度もここを歩いており、小径の様子もよく知っていた。だから不安など感じるはずはなかった。 ところがその夜、竹林の入口へ来た途端、ヨルが歩みを緩め、ほとんど立ち止まってしまった。 アヤがそれに気づいたのは、数歩先へ進んでからだった。 振り返ると、ヨルは最初の竹の列へ顔を向けたまま動かず、耳をぴんと立てていた。人間には聞こえない何かを感じ取ったときの姿だった。 「どうしたの?」 その場所の静けさを乱すことをためらうように、アヤは声を落として尋ねた。 ヨルはすぐには動かなかった。 アヤもその視線を追い、竹の幹と影のあいだに、猫を警戒させるような動物か何かがいないか探した。 何も見えない。 ただ月の光が竹の葉の隙間から差し込み、地面に淡い斑を落としているだけだった。その模様は、風に揺れる葉とともにゆっくりと形を変えていた。 やがてヨルが再び歩き始めたので、アヤも後に続いた。 一瞬ためらった自分がおかしくなり、微笑みさえした。 けれど、小径を少し進んだところで、彼女にも分かった。 今夜は、何かが違う。 竹の向こう、小径が曲がった先に、月明かりではあり得ない光が揺れていた。 それは月よりも暖かく、低い位置にあった。 小さな提灯の灯りに似ている。 風にゆっくり揺れる竹の隙間から、かすかに見えていた。 アヤは歩みを緩めた。ヨルも再び彼女の隣を歩いている。 そして曲がり角を越えたとき、ようやく光の正体がはっきり見えた。 大きな木の地表に浮き出た根元に、一つの提灯が置かれていた。 そのそばに、一人の女が座っていた。 見知らぬ女の姿より先に、アヤの心を捉えたのは、その木だった。 幹は太く、深い凹凸が刻まれ、何本もの根が地上へ大きく張り出している。一度見れば忘れるはずのない木だった。 それなのに――。 この竹林を知り、この場所を何度も歩いてきたアヤには、その木を見た記憶がまったくなかった。 女は二人が近づいてきたことに気づいていないようにも見えたし、あるいは、気づいたことを示す必要などないほど落ち着いているようにも見えた。 長い赤銅色の髪が肩から背中へと流れ、提灯の灯りを受けた毛先には明るい輝きが宿っていた。身にまとっているのは淡い色の着物で、繊細な梅の花が描かれている。そよ風に布地が揺れるたび、その文様がかすかに浮かび上がった。 真夜中に出会った見知らぬ者を邪魔してはいけない――そんな自然な用心深さから、アヤはさらに歩みを緩めた。 だが、その瞬間、女が顔を上げた。 穏やかな眼差しがアヤを捉えた。 そこに浮かんだ微笑みには、驚きも警戒もなかった。 「こんな場所にお客さまが来るなんて、珍しいわね」 声は柔らかく、それでいて揺るぎがなかった。 初対面の者同士が言葉を交わすときにあるはずの遠慮が、まるでない。 アヤは一瞬、挨拶だけして立ち去ろうと思っていたが、思わず背後を振り返った。 本当に自分に話しかけているのか確かめたくなったのだ。 「私、お客になったつもりはないんだけど」 女は微笑んだまま、ほんの少し首を傾げた。 「ここへ来る人は、たいていそう思っているものよ」 普通なら、その言葉を聞けばすぐに立ち去っていたかもしれない。 けれど、なぜか逆だった。 アヤはゆっくりと女へ近づいた。 ヨルはいつもより彼女の脚に寄り添うように歩いている。 やがて、女が座っている大木のそばまで来た。 「あなたの猫?」 女がヨルを見ながら尋ねた。 「ヨルは誰のものでもないわ」 アヤは答えた。 「強いて言うなら、私と暮らすことを自分で決めただけ」 女の微笑みが深くなった。 「それなら、あなたを選んだのはこの子のほうね」 アヤは小さく笑った。 気づかないうちに、それまで抱いていた警戒心が薄れていた。 女は少し身体をずらし、地面から盛り上がった大きな根の一部を空けた。 アヤは少しためらったあと、そこに座ってもいいかと尋ねた。 「駄目なら、わざわざ場所を空けたりしないわ」 言い方によっては無愛想にも聞こえそうな返事だったが、この女が口にすると、不思議なほど自然だった。 アヤは隣に腰を下ろした。 ヨルは二人の足元に残った。 そして、そこから始まった会話は、アヤ自身にも説明できないほど早く親しげなものになっていった。 二人ともまだ名前すら名乗っていない。 それなのに、何度も会ったことのある者同士のように自由に話していた。 女は、なぜこんな時間に一人で歩いているのかとも、どこから来たのかとも尋ねなかった。 アヤも、その奇妙なまでの無関心に影響されたのか、相手が何者なのかを尋ねようとはしなかった。 代わりに、二人は京都について話した。 ただ、女が知っている京都は、普通の住人が知る京都とは違う記憶によって形づくられているようだった。 彼女が語るのは、道や寺や町の名前だけではなかった。 帰ってこない誰かを待ち続けた家。 何年ものあいだ、誰にも知られず恋人たちが逢瀬を重ねた庭。 その後の人生を変えてしまう決断を胸に抱いた男が渡った橋。 女の言葉の中では、どんな場所にも、そこを通り過ぎた人々の痕跡が残っているようだった。 まるで都というものが、石や木や道だけでできているのではなく、時の流れにも完全には消し去ることのできなかった願い、悔い、記憶によっても形づくられているかのように。 アヤはしばらく聞き入っていた。…

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